展示予定の作品(一部)
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■能面、小面(こおもて)、初作品(1998年9月)
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小面の「小」は歳が若いとか、可憐さとか、雅やかさなどの意味で、女面の中で一番若く、十六・七歳の処女らしさを感じさせる。
肉付きが豊かで、額が広く、顎がうっすらと二重顎で、眼に張りがあり、愛らしさを感じさせる。
頭髪は中央で二つに分け、二ないし三筋が平行して美しく流れる。
この「小面」は、若い女面の原型ともいえ、この一面があればほとんどの若い女の能は演じられる。(解説)
1998年に打ち上げた女面初作品です。それまで狂言面や能面・翁といった、ある種作者の創作性が許されるというもので
彫り・塗り・彩色の基本をつけてきて、能面打ちの基本である「写し」の技巧に挑戦した最初の作品です。
この作品は顔の骨格を表する彫り、肉付きを表する塗り、そして皮膚を表す彩色等、能面の写しの技巧の
興深さを私に教えてくれました。(制作者コメント)
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■狂言面、嘘吹(うそぶき)、4作目(2004年2月)
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「空吹」とも書く。口をとがらせて息を長く吐くとこうした顔つきになる。
よくとぼけることを「うそぶく」と言うが、この名前の本当の意味は、「嘘」が口笛の意なのでむなしく息を吹くことをさす。
この面は狂言の中で、蟻とか蚊などの弱々しいものの精霊や人間の場合にはいつもおどおどしている小盗人の役に使う。
すぼめ突き出した口と睨む方向は様々だが、まん丸な瞳孔とが特徴である。
「蚊相撲」「瓜盗人」「蝉」「蛸」などに用いる。(解説)
狂言面は作者の独創性が表出するところで様々な表情のものが多く見られる面です。
この嘘吹は狂言師・茂山千五郎家に伝わる面の写真を参考に打ち上げました。
なかなか「写し」の技の奥深さを思い知らされた面であった事を思い出します。
眼差しにそった眉の動きの躍動感、独特な表情の彫り・刻み・削り・彩色のいずれの点でも
難儀した面でした。(制作者コメント)
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■能面、猩々(しょうじょう)、初作品(2008年7月)
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中国の説話に登場する。海や江に棲む酒好きで酔って舞戯れる妖精であり、富貴の化身と象徴され、姿・形は人間の少年である。
全体を赤く彩色してあるのが第一の特徴で、愛らしい笑みを浮かべ、いかにも愉快そうに笑っている。
口は薄く汚した白い歯を見せ、目を湾曲させて、眉を高く上げている。
「猩々」のシテ、「大瓶猩々」の後シテのみに用いられる。(解説)
赤色系の彩色の面は猩々に限るものではありませんが、能面の彩色の中で赤ほど難しいものは無いと言われます。
猩々は象形的・相貌的にも何種類かある面ですが、この表情は師の特別な手になる独特なもので
映画「八つ墓村」に使われた面を写したものです。(制作者コメント)
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■能面、孫次郎(まごじろう)、初作品(2001年9月)
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代表的な若く美しい面で、若い女性の面の中では最も人間に近い。
その名前は、この面を工夫した室町末期の金剛座の太夫「右京久次」に由来すると言われ、うら若いままに亡くなった妻への慕情を面に彫り上げ、
「ヲモカゲ」と言う名を付けたとの伝説がある。
新妻らしい豊麗(豊かで美しい)さと、この伝説が「孫次郎」を神秘化させている。
現在でも金剛流では源氏物語などから題材をとり、優雅な女性をシテとして、優美な舞を見せる三番目の中心的な面として使用される。(解説)
この面を打ち上げたのは2001年、能面を打ち始めて6年目、6作品目です。
能面の世界に足をふみいれて、「孫次郎」と称されるこの女面に、私はこよなく心を虜にされていたところで
打ち上げた時は気が晴れ晴れとしたことを覚えています。そして2006年に上尾の合同展示会会場で、
この面とそっくりな面を京都で見てきたと、来場者から声をかけられた事を思い出します。(制作者コメント)
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